日曜日, 7月 23, 2006

映画「ハチミツとクローバー」を観てきた

 アニメの柔らかい画が良くって、続きが気になって原作をちょこっと読んだりして、作品の絵と雰囲気がとっても好きになって…。第1期のアニメが終わったあとに映画化の話が聞こえてきて…。そんなこんなで時間が過ぎて22日(土曜)に公開された映画「ハチミツとクローバー」。初日は結構混んでいて、すぐに満席になっていたので諦めて、23日(日曜)に改めて池袋シネマサンシャインで観てきた。

 ポスターを見る限りでは、出来うる限り原作の匂いを残した感じの雰囲気。森田がちょっとワイルド・タッチなのが気になったけど、それはそういう解釈なんだなぁと思っておいた。はぐはもっとかわいい子が良かったけど、背格好やら雰囲気やらは原作に近いので、それなりに安心。竹本も同じように原作の匂いがありそう。真山は頑張って似せてるなぁ、と思った。似せ似せコンテストがあれば努力賞をあげたい感じ。花本先生(修)はちょっと違うようなと思ったな。彼女はOK出してたけど…。

 というわけで、映画館に入る前の感想はこんな感じ。お客はF1層が多いかと思ったが、10代が思いのほか多かった。20代後半の俺と彼女は居辛いなぁとちょこっと思った。あとは20代後半と思われる女性2人組と、オタクと思われる男性2人組がちょろちょろ。池袋は高校生が3人で来ると一人1000円になるサービスがあるらしく、3人組の中高生もちらほら見受けられた。

 さて、肝心の映画の内容はというと…、ってことで以下映画内容に触れるので見たくない人はみちゃダメ。











 がっかりだった…。原作を読んでアニメを観て、どこをどんな風に解釈すればあんな作りに出来るのか? 全くもって謎。ケチをちょこっと列挙していく。

■「花本会」なる学生の集まりはいらないんじゃないか? 原作は修の研究室、映画は修の家。そんな舞台を変えてまで、そして物語に何の影響も関係もない人間をわんさか出してまで、冒頭から主役の存在を薄める必要がどこにあるのか? そこまでしたことに何か意味があったのか? タダでさえ映画は時間が限られてるんだから、原作通り小ぢんまりとした人間関係でよかったろうに。「学生生活は華やかにしなきゃ」みたいなどうでもいい配慮で「花本会」なんて無駄な設定を作ったとしか思えない。

■はぐの絵。はぐは天才ということで話が進んでいくわけだが、いくら抽象画が好きで天才であったとしても、あの絵は無いだろうよ…。キャンバスの上の方だけにボンボン筆を叩き下ろしながらだらだらインクを垂らすだけ。出来た絵は天才とは程遠い、何の思想もない芸術性のないもの…。

 途中、はぐが苦悩してスランプに陥った後、キャンバスに黒い絵の具でぐるぐる描き始めたとき、「まさかこのキャンバスを真っ黒に染めて終わりなんてアホな演出だったり」なんて思ってたら、まさにその通りでその絵は描き終わった。笑っちゃったよ、これには。「苦悩」ってのをこんな小学生でも思いつくような演出でしか描けなかったってところがすごく笑えた。もう台無し。

 そしてエンディングの絵も水平線から絵の具が垂れた感じの海。はぐが描き続けてきた絵がずっと「垂れ垂れお絵かき」だっただけに、もう全然天才の片鱗も感じられなかった。「この絵は誰が書いたんだ?」と思ってエンディング・ロールを観てたら「MAYA MAXX」だった…。最後の絵くらい趣向を変えて欲しかったわ、さすがに。あと、はぐの筆の持ち方が一辺倒なのが気になった。天才ですからねぇ…、もう少し細かいところに気を配っても良かったんじゃないでしょうか。

■真山のキャラクター。あれ、ひどすぎる。真山をストーカーに仕立て上げた演出は、まぁ短い映画の上映時間からしたら仕方のない処し方だったのかもしれない。だがね、真山はちゃんと芯のあるキャラクターに描いてくんなきゃ! 最後のほうに原田デザインに戻るシーンがあったけど、山田に背中を押されて理花のもとに赴いて「俺をもう一度原田デザインで使ってくれませんか?」なんて台詞言わせてるし…。自分から堂々と行くことが出来ない奴が、女に背中押されて大好きな人の前であの台詞を言ったところで、どれだけの人が頷けるんだ? あの台詞自体が中身のない空虚な妄言にしかとれなくなっちゃうじゃん。なんか、脚本家は全然原作読み込んでないなぁと思わせるシーンだったな。

■海に行くなよ…。原作では最後までみんなで海には行かなかったってことになってる。けど海に行っちゃったもんな。

 などなど、もういろいろ言いたいことがある。竹本のちゃりんこの旅も描き方がどうも納得できなかったし。こりゃねぇ、確実に映画の作り方が悪かったですよ。時系列を出来る限り原作と同じようにして、で、重要ようなイベントだけ抜き出して「1年目の春」とか「2年目の冬」とかそんな風にやりゃ良かったんですわ。意味のわからない監督や脚本家の「新訳」は本当に混ぜて欲しくなかった。最も悪い方向でその「訳」が作用した感じ。質の悪い韓国ドラマにされちゃった気分で、原作の舞台と、キャストと、そして重要なシーンを適当に混ぜ込んで作った全く別のパクリ作品になってた…。

 だから半分観ないうちに飽きちゃった。

 原作を読んでた人やアニメを観てる人は「映画ではどんな演出するんだろう?」みたいな見方が(冷笑家な気分で)出来るから、とりあえず寝ずに最後まで観ることは出来るだろうけど、原作も何も全く知らない人は途中で寝ちゃいそうなくらい退屈だと思う。どうも感情移入しづらいんだよね、映画のつくりが。

 そんなわけで菅野よう子の音楽を久々に聴いて、「あー、変わってないなぁ」なんて思いながら観てた。

 そしたら、今日のいいともに脚本家が出てた。河原雅彦っていうらしい。態度が気に食わなかった。見た瞬間「こいつにハチクロの脚本は書けねぇ」と思わせる何かがあった。で、ついでに監督も調べた。高田雅博。CMディレクターあがりの映画初監督作品が今回のハチクロだった…。あぁ、実験台にされちゃったよ、ハチクロ…。つまり今回の映画の出来の酷さは「絶対死ぬはずがない手術で患者を殺してしまうような医療ミス」みたいなことでこうなってしまったってわけね…。悲しいなぁ…。というか映画だけ観た人に「ハチクロってつまんねー」なんて思われちゃうことが悲しいねぇ…。

 ということで、今回のハチクロの映画はちょっと残念な出来でした。原作が大好きな人は観ても全くつまらないと思います。役者や舞台なんかの「箱」は丁寧に作ったのに、原作の重要なシーンを抜き出してつながりは深く考えずにぽんぽん積み上げただけの「脚本」が駄目だった。あとCMディレクター出身の監督ってこともあって、各シーンばらばらに作ったCMをつなぎ合わせたような感じがあったな。物語に一本と負った明確な筋が見えないので、シーンごとに見たらそれはそれで完成してるんだろうけど、全体で見ると片想いがたくさんあるってのは大前提でそれは分かるけど、どうもぼやっとしてるというか、なんというか…。そんな感じでした。


 あ、どーでもいいことだけど、菅野が何で音楽やってたのか理解した。CMつながりだったわけね~。

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